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茶ノ木蔵人

Author:茶ノ木蔵人
普通のサラリーマンが、徒然なるままに駄文を垂れ流すブログです。

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異界の姫巫女:その2
 世界は沈黙に包まれていた。


 妙に静かだ。先程までの喧騒が嘘の様である。気が狂いそうな程の大音量で鳴り響いていた、強烈な耳鳴りは既に収まっており、瞼の裏側で嫌というほど感じていた、無駄に明るい光も今は感じない。そして不思議な事に一瞬たりとも意識を失っていないはずなのだが、状況が切り替わった瞬間を何故か把握出来ない。俺は強制的に知覚へとブランクを作られ、居心地の悪い奇妙な感覚を覚えていた。
 先程の事態は気のせいだと他人から言われればその通りだとも思えるし、夢だと断言されれば目を開けた瞬間に全てを忘れてしまいそうな程、俺の中では現実感が伴っていない。しかし俺の右手で握り締めている姉貴の手の温もりが、安直な思考の逃避を許さなかった。

 目を開ければ全てが判る。俺は内心の動揺を抑え覚悟を決め、現実を受け止めようと行動を起こしかけたが、視覚から得る情報よりも一瞬だけ早く、聴覚から得る情報が飛び込んで来る。

「あれ? ここは何処だろう?」

 俺の緊張感を返せ。まあこれ位の能天気さが姉貴らしいとは思うが。

 オールシーズン対応型の天真爛漫娘が、緊張感のかけらも感じていない事を悟った俺は、これ以上自分一人であれこれ考えていても空しさが増すだけだと判断して、徐に両目を開けた。まず俺の目に飛び込んできた、相も変わらず非常識に宙を彷徨っている不思議な物体に嫌そうな視線を向けた後、とりあえず周囲の様子を探る事にする。

 窓の外には大きな月が輝いているので今の時刻は夜のようだ。先ほどの不可解な出来事は、俺の記憶が確かならば晩御飯直前に起こったはず。空に月が輝いていたかまでは確認していないが、それほど大きな時間のずれはないように思えた。
 そして俺達が今居る場所は、どこかの神社にある本殿のようだ。どこにある神社なのかまでは判らないが、実家じゃない事なら断言できる。実家の神社よりひと回り大きな本殿には見覚えが無く、それ以前に照明器具らしい物が全く確認できないのに室内が普通に明るいという、非常識極まりない神社など見た事が無い。むしろ縁すら持ちたく無いのだがもう手遅れか。

 余り考えたくは無いが、俺達は誘拐かもしくはそれに順ずる何かの手段で実家から連れ出され、この場所に連れて来られたってところか。どんな手段なのかさっぱり思いつかないが、科学がここまで進歩したこの世の中で、理由が付かない不可解な事など起こるはずが無い。百歩譲ってテレポーテーションまでなら妥協してやる。それ以外の、

「神隠しとかかな?」

 そう、そういう類の出来事だと俺には対応出来んから認める訳には……。って、人が考えないようにしていたのにこいつは。

 そんな俺の気持ちを知ろうとする素振りを全く見せず、姉貴は俺の右手を振り回しながら嬉しそうな顔で話し掛けてくる。こやつの辞書には危機感とか不安感とかそういった文字は無いのか。とはいえ、泣き叫ばれても俺にはどうしようもないから、このままでも良いとは思うが。

「もしくは異世界招待ってやつかな?」
「それを言うなら異世界召喚だろ」

 口に出して酷く後悔した。

 今のこの状況が、神隠しとか異世界召喚などというふざけた手段によってもたらされたと仮定すると、どこからどう見ても一般人の俺の手には余る代物だ。ここが家の近所ならば歩けば帰れるし、日本国内なら交番に駆け込んで保護してもらえば良い。外国だとしてもどうにかして大使館までたどり着ければ、大事になるだろうがそのうち実家には帰してもらえるはず。
 しかし国家権力が及ばない摩訶不思議な世界に紛れ込んでしまったのなら、そういった手段が使えるはずも無い事は理解している。俺に隠されていた不思議な力が今ここでご都合主義的に覚醒し、俺の存在が一般人というカテゴリーから外れるなら少しは期待できるが、その力が世界を超える力だという保障は無い。というかそんな事考えるだけ無駄だ。

「なあ姉貴。異世界召喚とか、そういった事をとりあえずは考え」

 ないでここから出る事を考えよう。と、言おうとした俺の言葉は突如中断させられた。

「良く判ったの。なかなか冷静じゃな」

 無駄に偉そうな声が俺の台詞を遮る。

 普通に考えれば今回の不可解な事態を招いた黒幕がいきなり登場し、緊張したり狼狽したり恐れおののいたりするタイミングだと思うが、この時の俺の反応は少し違った。
 何だか無性に腹が立っていた。ここ最近の俺の全て行動は常に何かに邪魔をされている気がする。どう考えても九割以上は姉貴の仕業だが、それを認めると少し悲しくなるので意図的に思考から外し、偉そうな声の主の方へと勢い良く振り向き、八つ当たり気味に啖呵を切る

「お前か! 今回の事態を招いた犯人は……。へ?」


 俺の目の前には、身長が五十センチ位の小さな女の子がフワフワと宙に浮かんでいた。


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一気に書き上げる時間が無かったので分割気味にアップ。
プロットを組み上げるのにも時間が掛かって、書き出しまでに時間が掛かりました。楽しんで頂ければ幸いです。


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(旧)姫巫女 | 23:44:21 | トラックバック(0) | コメント(0)
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