■プロフィール

茶ノ木蔵人

Author:茶ノ木蔵人
普通のサラリーマンが、徒然なるままに駄文を垂れ流すブログです。

■オリジナル小説

■最新記事
■カテゴリ
■最新コメント
■最新トラックバック
■リンク
■ブロとも申請フォーム
■FC2カウンター

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
異界の姫巫女:その3
「……」

 俺の動きは完全に止まっている。

 両目は間違いなく小さな女の子の姿を捉えているはずなのに、思考が完全にフリーズしていた。鳩が豆鉄砲を食ったような顔というのは、多分今の俺の顔が作り出している表情を指しているのだと思う。鏡で自分の顔を確認した訳では無いが、自信を持ってそう断言できる。俺は言葉を発するどころか指先一つ満足に動かせなかった。
 なんとなくではあるが、俺は自分の理解を超えた不思議な世界に紛れ込んでしまったという自覚を持っており、この先もっと不可解な出来事が起こるかもしれないという覚悟も、それとなく持っていたつもりだ。しかし目の前の光景は、そんな俺の心構えを全て吹き飛ばす破壊力がある。反則なのにも程があるぞ。

 テレビや漫画の中でよく見る登場人物が何かに驚かされたシーンで、心底驚いた対象者がそれなりのリアクションを取っている姿が描写されているが、どう考えてもあれは嘘だ。シナリオが存在する予定調和の中での出来事か、ある程度冷静に物事を判断する余地が残されている場合にのみあれは成立する。間違い無い。
 さすがの姉貴も今回ばかりは驚いた様子で、先程までの駄々っ子ぶりは鳴りを潜めて大人しくしている。怖がりのはずなのに悲鳴の一つも上げないところを見ると、怖いというより驚きの感情の方が強かったのかもしれないな。まあ、目の前に浮かんでいる女の子は、どこからどう見ても怖さを感じないし。

 少しだけ余裕を取り戻した俺は、そんな事を考えつつ目の前の人物をまじまじと見つめる。

 服装は平安時代の貴族のような、それでいて巫女服のような不思議な感じの服を着用している。髪型は肩辺りで切り揃えられたおかっぱ頭であり、頭には大きな赤いリボンを付けていた。
 目鼻立ちは幼い感じではあるが、十数年後には絶世の美女に育ちそうなほど整った顔立ちをしている。背が五十センチ位しかない事と宙に浮いている事に目を瞑れば、非常に可愛い女の子であった。まさに人形のようなといった形容が相応しい容姿だ。

 思わず、可愛いもの好きの姉貴が見たら放っておかないだろうな、などと一瞬考えたが、今現在姉貴と行動を共にしていることを即座に思い出し、姉貴がどんな表情をしているのか確認すべく右横を向いて顔を覗き込む。

 うわぁ。

 姉貴はめちゃめちゃ良い顔をしていた。大きな黒い瞳は普段よりもさらに大きく見開かれてキラキラと輝き、浮かべている笑みも当社比百五十パーセント増しになっている。憧れの人物を目の前にした乙女の表情というより、昔から欲しかった玩具を目の前に置かれた子供のような表情といった方がしっくりと来る感じだ。
 まあ、この様子ならば問題無かろう。そう判断した俺は、目下の問題事の原因であろう人物の方へと再び視線を移す。

 先程まで俺達の目の前に浮かんでいた、直径五十センチ程度の半透明な物体と入れ替わるようにして、その女の子はフワフワと宙に浮かびながらこちらの様子を笑顔で見つめている。色々と言いたい事は山ほどあるが、とりあえず目の前の事象を全て認めたと仮定すると、半透明な物体の正体はこの女の子といったところか。
 半透明の不思議な物体と交流を図ろうとは思えなかったが、姿形が人間と近しい存在なら話は変わる。先程の様子からすると日本語も通じそうだ。とりあえずコンタクトを図って少しでも情報を仕入れなければ。

「なあ、あんたは何者なんだ?」
「わらわは寛大ゆえ怒りはせぬが、もう少し言葉使いには気をつけた方が良いと思うぞ」

 無駄に偉そうな口調が少々癪に障るが今のはあちらが正しい。しかし、こいつが今回の事態を招いた犯人かもしれないと思うと、丁寧口調に直す気にはならない。

「ああ、口が悪いのは元々なんだ。気に障ったのなら申し訳ない」
「まあ、緊張しておるだろうし色々と思うところもあるのじゃろう。悠の性格では人から言われて、はいそうですかって訳にもいかんじゃろうからその位は構わんぞ」

 女の子の返答を聞いた俺の背筋に悪寒が走った。

 こいつは俺の事を知っている。ブラフの可能性もあるが、いちいちそんな事をする必要性は今の会話の流れには存在しない。それ以前に俺の勘が事実であると告げている。こいつは一体何者だ。俺の狭い交友関係には人外の存在など挟まる余地は無い。

(続く)

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ人気ブログランキングへ
スポンサーサイト


テーマ:*自作小説*《SF,ファンタジー》 - ジャンル:小説・文学

(旧)姫巫女 | 22:57:12 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010-09-18 土 02:23:15 | | [編集]
コメント確認しました。

掟破りの私信:色々と環境が整いましたらまた教えて下さい。このままだとコメントを読むことが出来ても返事できないのでw
2010-09-18 土 18:41:15 | URL | 茶倶楽 [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010-09-18 土 23:46:00 | | [編集]
コメント確認。

再度掟破り:その時を楽しみにしています。待ってますよ。
2010-09-19 日 00:26:08 | URL | 茶倶楽 [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。